『グンちゃんカラ子ちゃん塗装救助隊』
おおくらとしお著     150円 (現在では入手不可能と思われる)
発行 グンゼ産業株式会社ホビークラフト部
制作 モデルアート社
子どもの頃、私は模型小僧だった。そんな私のバイブルがこれ。
ラッカーの定番メーカーグンゼ産業と、硬派な模型雑誌で有名なモデルアート社が、子供向けに模型制作の基礎を説いたまさしく名著。
計画的な製作活動において、基礎に勝る技術などない。この本は、そんな大切な基礎をおおくらとしお氏のイカしたマンガで面白く身につけさせてくれる。
研磨、刷毛塗装、吹き付け塗装の基礎といったことから瞬間接着剤やスプレー塗料の手入れ法にいたるまで、今の私たちの仕事にしっかりと生きている。模型小僧時代にこの冊子に出会えたことを、心から誇りに思い、感謝している。
最近の低年齢層向けのプラモデルの中には、あらかじめ色が付いているものや、接着剤を使わなくても組み立てられるようなものがあるらしい。笑止千万!そんなのは子どもの可能性を、探求心を、努力を全部スポイルしている。
プラモデルを作らなくなって久しいが、実は今少年たちと一緒に「工房太郎模型クラブ」を設立しようともくろんでいる。胸がわくわくしてくる。

残念なことに、この本は恐らくもう手に入らない。私も本屋などで購入したのではなく、大昔に模型屋でただでもらった。販促の意味を含んだ冊子であったのだろうと思う。いわば模型塗料の普及パンフレットだ。しかし、「手軽だ」、「簡単だ」ということを無責任にふれまくるのではなく、簡単なことがらから丁寧に指導していく普及姿勢であるところが素晴らしいと思う。なにかを普及するという行為には、未来を築き上げるという尊い意味があるのだ。

(文責  吉田)